レーズンやバニラ、ハーブを感じる複雑な香り。
滑らかなのみくちに、カシスやアプリコットのようなジューシーな酸味。
ブランデーやホップをイメージするコクと苦みにチョコレートやカラメルを連想する上品な甘さの余韻。

生産地区にあたるホデイダは国内第4位の街で、紅海を望む湾岸地域はイエメンにおける最重要拠点の一つでもあります。100を超える古代のモニュメントや遺跡が多く残る歴史的な街でもあり、中でも西暦972年ごろに設立された世界最古の大学の一つを有します。
ホデイダの街から約50km程に位置するブラア村は、アラビア半島の西縁を紅海沿いに細長く連なるティハーマ高原を見渡す野生動物の聖地です。そこではイエメン固有の動植物が多く生息し、自然豊かな環境に恵まれています。

標高2,000mを誇る自然豊かなブラア村ですが、やはりイエメンはイエメン。他の地域より“比較的”天候に恵まれているとはいえ、厳しい自然環境であることに変わりはありません。地中深くまで伸びた根がごく限られた水分で生き延び、昼夜の温暖差も大きく非常に乾燥した、他国では生産不可能なほどのストレスをコーヒーの木に与えるため、生産量はごくわずかながら、だからこそ硬く香り高いコーヒーが生み出されます。

今回届いたコーヒーは、ディープ・ファーメンテーションという工程を経て仕上げています。
品種はSL28のみを使用。村で丁寧に手摘み収穫され、気温と湿度を空気循環とシェードで管理しながら3週間程度チェリーが重ならないように丁寧に撹拌・乾燥された後、最後の1週間はあえてチェリーの重なりを2倍に厚く(Deep)し、水分値の均一化と熟成(Fermentation)を促し、クリーンなカップに深みと厚みを加えた特殊なロットです。

コーヒーには奥深い魅力があり、同じコーヒー豆でも焙煎度合により、様々な香りや味わいをお楽しみいただくことができます。 焙煎が浅ければ酸味が強調され、香りは軽やかになります。深くなると酸味が隠れ苦みが増し、香りは重たくなります。

抽出する器具に合わせた挽き方をご指定頂くことが、コーヒーを美味しく抽出する近道といえます。